ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【51日目】夜の散歩と迷い猫の日

昨晩、過保護なまでに自分の身体を労ったので、今日はすこぶる体調の良い1日だった。やはり「大槻ロール」の効果は絶大である。

しかしずっと床に伏していると筋力の衰えを痛感する。今朝も普段と変わらぬ通勤経路を辿ったはずなのだが、何だか妙に疲弊してしまった。

このままでは日常生活にも支障を来しかねないので、帰り道は少々歩くことにした。最寄り駅から自宅までは徒歩6分ほどの距離だが、今夜は大きく迂回して30分ほど散策してみようと思う。ひきこもりの私にとってはエベレスト登頂に匹敵するほどの大冒険である。

コンビニで携帯食料と飲料を調達し、普段とは違う方向の出口から駅を出た。夜の散歩は不思議と胸が踊るものである。それが週末の夜なら尚更だ。

駅前の商店街を抜けると、多くの自動車が行き交う大通りに辿り着く。この道はどこから始まりどこに繋がっているのか、そして人類はこの先どんな道を辿っていくのか。

そんな哲学的なことを考えながら歩いていたら、小さな段差につまづいて転んだ。気分は病み上がりで足腰が鈍ってしまったアシタカである。しかし私の目の前にヤックルは居なかったので、誰にも言い訳をすることが出来ず、ひたすら恥ずかしい思いをしただけだった。これだから外出は嫌いである。

考え事をしながら歩くのは大変危険な行為だと悟った私は、その後無心で歩き続けた。足腰が甲高い声で悲鳴をあげるが、それでも自分の身体を徹底的に虐め抜く。私にしては珍しくストイックである。

大きく周回して踏切をわたると、再び最寄り駅が見えてきた。こちらは普段の私が歩き慣れた道である。見覚えのある光景に、少しだけ安堵する。本音を言えばこんな行脚はとっとと止めて家でYouTubeを観たかった。もう少しで愛しの我が家である。

ラストスパートをかけたいところだが、生憎疲れきっていたので普段よりも些か遅い足取りで帰路につく。せっかくなので街中の風景をのんびりと眺めたい気持ちもあった。

思えばこの土地で暮らし始めて3年になるが、街の様子も大きく変わった。駅前にあったゲームセンターは不況の煽りで閉店に追い込まれ、その近くにあったミスタードーナツも潰れてしまった。居酒屋チェーンも次々と撤退してしまい、随分寂しくなったものである。この街の経済状況は大丈夫なのだろうか。

不安な気持ちを拭いきれないまま歩き続けると、ようやく我が茅屋の影が見えてきた。この大きな駐車場を通り過ぎれば、長かった今夜の冒険も終わりである。

数々の自動車の合間を縫うように歩みを進めたが、そこでふと立ち止まった。何かの気配を感じたのである。恐る恐る振り返ってみると、そこには1匹の猫が居た。

この街で野良猫に出会すことはそう珍しくもないが、この猫は以前も何度か見かけたことがあった。何故その特徴を覚えていたかと言うと、以前にマンションの隣人が逃がしてしまった飼い猫と模様が似ていたからである。

もしかすると彼(彼女?)は、主人のもとへ帰りたいのでは無いだろうか。若気の至りで飛び出してしまったものの、野生の世界で生きる厳しさを実感し、主人の愛情が恋しくなったに違いない。

何とか連れて帰ってあげたいところだが、私は黒神めだかと同じく「動物避け」のスキルの持ち主だった。猫は一定の距離を保ったまま警戒態勢を示しており、近づくのは至難の技に思われた。

ひとまずコミュニケーションを取るべく、猫の鳴き真似を試みる。低くて鈍い獣の呻き声のような不快音に、彼は心做しか怪訝な表情を浮かべた。見事なまでに失敗である。

こうなったら餌で釣ろうかとも考えたが、先ほど購入した携帯食料は既に私の胃袋に収まっていた。万事休す。仕方が無いので一旦その場を離れようと思い、最後に一声かけようとした。

「バイバイ」

私がその言葉を口にしようとした瞬間、遮るように「誰か」が言った。私は慌てて後ろを振り返ったが、そこに人の姿は無い。薄気味悪さを覚えながら正面に向き直ると、目の前に居たはずの猫も姿を消していた。

あの声は、まさか。

 

※追記1

 黒神めだか週刊少年ジャンプで連載されていた『めだかボックス』の主人公である。やたらと文字が多いことで知られる作品だが、それもそのはず。原作は『化物語』で知られる西尾維新先生である。何でも1日に原稿用紙100枚〜200枚を書き上げるそうな。

 

※追記2

慣れない散歩をしたせいか、帰宅して早々に足をつった。ベッドの上で悶絶中。